ターシャ・テューダー 写真:リチャード・W・ブラウン 訳:食野雅子 メディアファクトリー 2005.6.3
読書日:2021.8.28
絵本作家ターシャ・テューダーがバーモント州の山奥に作っている庭の写真集。日本オリジナルの本。
ターシャ・テューダーってどんな本を書いた人か知らないけど、有名な絵本作家なんだそうだ。しかし絵本作家は食べていくためで、本人は自分の庭の世話をし続けるのが一生の生きがいらしい。それで住んでいたニューハンプシャー州からさらに田舎のバーモント州の山奥に56歳に引っ越しをして、ずっとそこで庭の世話をして暮らしている。もちろん庭と言ってもとても広く30万坪もあるのだ。中には池もあるし、ヤギや鶏を飼っているし、犬や猫ももちろんいる。
写真集なので、その庭の全貌が次々に紹介されるわけだが、わしは何よりも、りんごの木(クラブアップル)や西洋ナシやブルーベリー、いちご、モモなどの木がのびのびと自由に伸びている様子に感嘆した。こういう風景いいなあ、と思う。なぜなら、わしが子供の頃に暮らした実家は、いちじくやすもも、ぐみ、びわなどが自由に育っていて、よく手でもいで食べていたから。最初は周りになにもないところだったのに、残念ながら、いつの間にか周りが住宅だらけになってしまって、それらの木は切らざるを得なくなった。それでいまでもこんなふうに自由に伸びて実をつける果物に憧れるのだ。
とはいうものの、残念ながら、わしは都会の生活を離れられないと思う。ターシャのように暮らすことはとてもできない。農業にもあまり興味がないし。きっとわしは、株式市場が与えてくれる小さなお金を掠め取りながらほそぼそと都会の片隅で生きていくのだろう。
「ポツンと一軒家」というテレビ番組があるが、それを時々見ることがある。そこに出てくる人はよく、自分で決めたことをたんねんにこつこつと続けて時を過ごしている。なにか迷いがないというか、自分にしかできないことをやっているような気がする。そういう人生はすこし羨ましい気がする。
ターシャは2008年に亡くなった。彼女が世話をした動物たち植物たちはどうなったんだろうか。
(なお、彼女の遺産は美術品だけでも200万ドルだったそうで、遺族の間で訴訟沙汰になったそうだ。やれやれ。)
★★★★☆