ブレイク・スナイダー 訳・菊池淳子 株式会社フィルムアート社 2010.10.30
読書日:2021.3.4
売れっ子脚本家が、自分の脚本術を惜しげもなく公開する本。
スナイダーが惜しげもなく公開できるのは、たぶん、公開してもそれを実行できる人が少なく、自分への害がほぼないと確信できたからだろう。それに著者自身が周りの人からいろいろ教わっており、それを他の人に伝えることに意義を持っていたのだろう。著者はこの本を出版して4年後に病気で急逝している。ありがとう、スナイダー、書いておいてくれて。
この本がすごいのは、自分が使っている脚本のフォーマット自体を公開していて、そのフォーマットに合わせて練っていけば、それなりに読める脚本が完成してしまうことだ(たぶん)。これはすごいなあ、とわしは思った。
わしは一時期、非常にたくさんの映画を観ていたことがあって(もちろん、無料のTV放送がほとんど(笑))、この時に非常に気になったのは、映画の構成だった。シーンとシーンがどんなふうに結びついているかというところがとても気になったのだ。そういう意味では、とてもいやらしい観方をしていたわけだが、本当にほとんどの映画はこの本に描かれてあるような構成になっている、とわしは確信できる。
ターニングポイントが2つあるとか、第2のターニングポイントの前に主人公がすべてを失い、死の影が宿る、とか、本当にその通りだなあ、と思う。
でもまあ、この構成よりも大切なことがあると著者は述べている。それがログラインで、それはこの映画がどんな映画であるかを1行で言い表したものだ。テーマともちょっと違う。まあ、例えばこんなふうだ。
--警官が別居中の妻に会いに来るが、妻の勤める会社のビルがテロリストに乗っ取られる。(ダイハード)
ふーん。
1行のログラインを聞いて、面白そうと言われるためには、その内容に皮肉が効いていなくてはいけないという。皮肉というのは、たとえば真逆なものが組み合わさっている、というような状況だ。
ーー彼女は完璧な美女、お酒を飲むまでは。(ブラインド・デート)
--週末の楽しみに雇ったコールガールに、ビジネスマンは本気で恋をしてしまう。(プリティ・ウーマン)
ここで面白いログラインが思いついたら、もう勝ったも同然なんだそうだ。脚本家は書いてるときに迷ったら、何度でもこのログラインに立ち返って見直さなくてはいけないという。もしくはログライン自体を書き直す。
そして良いログラインは、プロデューサーにどのくらいの予算でできそうか、なども容易に予想できるようにできているという。(まあ、これは実際に売るためには確かに必要なことではある。)
びっくりするのは、多くの脚本家は脚本を書き終わって、プロデューサーに説明するときに初めてこのログラインを考えるのだそうだ。脚本家はまずどうしても書きたいシーンがあり、そういうシーンをつなげて脚本を書きがちなんだそうだ。だが、著者は、ログラインだけで興味をそそられるようでなければ、そもそも書き初めてはいけないのだと言う。
脚本家が一番楽しいときは、シーンがかなりでそろって、構成を考える時だそうだ。著者は、シーンの数は40と主張していて、40枚のカードを使う方法を提唱している。40枚のカードを机やボードに並べて、ああでもない、こうでもないと考えているときが最も楽しいそうだ。いくらでも時間をつぶせるし、いくらでも楽しめるという。
へー。映画を見ていると、なぜか構成が気になる身としては、なんとなく理解できなくもないですが、そんなに楽しいんですかねえ(笑)。やってみようかしら。
★★★★☆
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