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AI時代の新・ベーシックインカム論

井上智光文社新書 2018年4月17日
読書日:2018年07月30日

ベーシックインカムについて、総括的に学べる良書。単にベーシックインカムについて説明しているだけでなく、貨幣制度に与える影響、政治的な位置関係について説明しており、この点が新しい。

貨幣制度については、これまでは中央銀行が貨幣を発行し、銀行に貨幣が行き、それが企業へ行き、最後に国民に渡っていた。この方式は当たり前のように思えるが、近代になって成立したものに過ぎない。この方式ではいったんデフレになると、そこからの脱却が難しくなる。

これが、発行した貨幣を国民に直接配布するベーシックインカムになると、貨幣の流れが変わり、中央銀行の発行した貨幣は、直接国民に行き、それが銀行へ行く。従って、デフレからの脱却は容易になる。

一方、バブルについては、銀行の信用創造を禁止する(100%準備制度)ことで防げるとする。銀行はお金を管理して手数料のみをもらう存在になる。ここまで来ると、リスクの担い手はどこになるのだろう、という気がするが、どちらにせよ今の制度は絶対でないということを確認させてくれる。

政治的には、ベーシックインカムは、右からも左からも賛成され、同時に右からも左からも攻撃される存在だという。これは、ベーシックインカムの立ち位置が、右でも左でもない、第3の立ち位置にいるからで、著者はそれをリベラル・リバタニズムと呼んでいる。大変、興味深い主張である。

こうして、ベーシックインカムが実現すると、社会的には大変革が起こる可能性があり、はっきり言って、かなりわくわくさせられる状況だ。

ベーシックインカムについて考え始めた頃に読んだ本ですね。2021.03.10)

★★★★★


AI時代の新・ベーシックインカム論 (光文社新書)
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