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大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清

松元 崇 中央公論新社 2009年1月
読書日:2009年05月06日 09:29

松元崇氏は現役の財務省系官僚の大物で、内容のほとんどは財務省の発行している雑誌「ファイナンス」で連載した内容。そうすると読者は財務省官僚という事になるから、一般人が読むことを想定していない。内容はかなり硬い。

高橋是清という名前が題名に出てくるものの、内容の実体は、明治から2.26事件までの日本の財政史である。これがなかなか興味深いのだ。これを読んでいると、日本の財政は、よかったというときがほとんどなく、苦難の連続というイメージだ。かつては戦争があることが普通であったから、戦争のお金をどこから持ってくるかとか(たいていは外債を発行)、農業に基板を置いている日本がどんな風に工業に移って行くかとか、財政の面から考えていかなければいけないことがたくさんある。当時としては金本位制にするかどうかという点も大きな争点だった。

財務省ごのみに、高橋是清の従来のイメージを変えようとしているところがある。例えば、高橋是清は不況を克服するために大幅財政出動したようなイメージがあるが、実体は健全財政論者だった。金本位制に反対だったというイメージがあるが、実際はそのやり方がまずいと反対の論陣を張った。国債の日銀引受も、あとから売りオペで90%は市中に売ったので市中消化と変わらなかった、などと、健全財政を進めようとする財務省の立場を援護するような内容になっているのがほほえましい。そうだとしても高橋是清の思考過程がかなり詳細に分析されているという点で、出色の本だろう。

財政はマクロ経済そのものだから、普通の感覚とはかなり違う。そういう視点をもって財政史を語ることができるというのは、現役官僚の氏ならではでないか、という感想を持った。

★★★★★

 


大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清

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