ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

中国の大プロパガンダ 恐るべき「大外宣」の実態

何清漣(かせいれん) 訳・福島香織 芙蓉社 2019.10.30
読書日:2020.2.22

中国が金にものを言わせて、マスコミを通じて外国に対して大がかりな宣伝活動を繰り広げている実態を告発した本。台湾で出版されたものを、中国関係のスター記者である福島香織が翻訳した。

もともと中国共産党は宣伝に力を入れていたが、経済大国になるにつれて外国に対して大々的な宣伝を繰り広げた。ちょうどインターネットの発達でマスコミが苦境に陥っている状況なので、経営不振に陥ったマスコミを買収し、リストラにあった記者を雇って記事を書かせ、ラジオ放送を垂れ流しているようだ。

でも、欧米に対してはほとんどなんの役にも立っていないようだ。なぜなら見るとすぐに中国共産党の宣伝でしかないことが分かり、記事も別段面白くもなんともないから。ほとんどの中国傘下のマスコミは赤字で、中国政府の補助なしにはやっていけない状況で、モールなんかで無料で配っているそうです。(どれだけの人が手に取るのか疑問ですが)

唯一の例外は日本で、「人民中国」という雑誌が1万数千部が有料で購読され、黒字なんだそうだ。元朝日新聞(やっぱりなあ)の横堀克己という人物が日本人向けに編集を担当しているんだそうだ。読者もきっと朝日新聞を購読している人と被っているのだろう。おそらくけっこう高齢の方なんじゃないかと思う。読者の高齢化と朝日新聞の権威失墜の影響で、この雑誌も遠からず赤字に転落するのではないかと予想する。

欧米に対してはあまり効果がないとしても、自分たちのテリトリーと信じている香港、台湾に対してはもっと大々的に干渉している。

苛烈な対策が取られたのは一国二制度の香港で、いまでは香港のマスコミで自主独立なマスコミは無くなってしまったという。香港で機能しているのは、個人がインターネットで行っているSNSであり、マスコミは全く機能していない。このことはこの本が出版されているときに起こった、2019年末の香港の大規模なデモを見ても明らかだ。

成都で譚作人(たんさくじん)というひとが石油プラントの反対活動をしていたが、国家転覆罪で逮捕された。支援者が彼の無罪を証明するために、譚作人を取材していた香港の記者にインタビューを求めたが、拒否されたという。なぜなら、ここで中国政府の機嫌を損ねると、譚作人の裁判の取材ができなくなるからという。もはや、香港のマスコミには人権を守るとかそういうジャーナリストの正義の心はないのである。

台湾に関しても、中国はマスコミの買収をおこない、干渉を試みた。2010年代の前半では、反中国の本を出版するのも厳しかったようだ。本書のもととなった文書は2011年に書かれたが、出版されなかったそうだ。その後、台湾の政治、マスコミは中国に対する自主性を取り戻し、本書も2018年に出版された。

中国の外部に向けた大宣伝はほぼ失敗した。しかし、もう一つの目的である欧米からの情報の取得、つまりスパイ活動には大きな成果を収めており、具体的には科学・技術情報を大量に入手し(マスコミ経由よりも留学生経由の方が効果が大きいと思うが)、中国の経済発展に貢献している。

中国は自由主義陣営のシステムを利用しながら、自分たちはその発展に全く寄与せず、それどころかそれを破壊して自分が取って代わろうとしている。そろそろお仕置きが必要な時期だ。

問題は日本だ。韓国ほどではないが、経済のかなりを中国に依存していることもあり、強い態度に出ている欧米に対して緩衝材的な役割を果たして、中国に恩を売っておこうとしているように見える。実はわし的には、それもありか、という気もしており、必ずしも否定するものではないが、くれぐれも中国から適度な立ち位置を保ち、日本の独立性を十分確保してほしい。一方、朝日新聞は今後も権威を失墜し続けて、はやくただの不動産屋になっていただきたいなあ、と思う次第です。(朝日新聞はすでに本業よりも、賃貸の不動産業の方が利益が大きいらしい)。

で、この本を読むことをお勧めするかというと、細かいマスコミの買収の話が続いたりして、記録としてはいいが読むにはちょっと辛いので、読まなくてもいいと思います。(しかもすでに明らかに失敗している話だし)。

★★★☆☆

 


中国の大プロパガンダ

にほんブログ村 投資ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ