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ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する

ジーヤ・メラリ 訳・青木薫 解説・酒井伸之 文芸春秋 2019.7.25
読書日:2019.12.23

実験室で宇宙を創造するにはどういう方法があるかについて、インフレーション理論、ひも理論などから言える最新の状況から解説してくれる本。著者は現在はジャーナリストだが、つい最近まで宇宙論を研究していた女性。

宇宙を創造するというのは、結局のところ、インフレーションを起こして、新しい時空間を大量に発生させるということであり、インフレーションが起きる状況を再現すればいいという話になる。

その方法としてはいろいろな可能性があり得るが、もっとも簡単な無理のない方法としては、まだ発見されていない磁気単極子(N極、あるいはS極のみの磁気粒子)にエネルギーを与えるとミニユニバースが発生することが分かっている(解説の酒井氏の研究結果)。なので、この粒子をもしも見つけることができれば、話はとても早い。だが、この磁気単極子が見つからない理由は、インフレーションによって宇宙が広がった結果、ものすごい低密度で存在しているからというから、なんか鶏と卵みたいな関係なのである。

しかもこのように発生した宇宙はわれわれの目からはミニブラックホールにしか見えないのだという。ミニブラックホールの狭い空間が内部では莫大な広さの空間になっているのだという。(だから宇宙を創造しても、我々のそばに巨大な空間が突然発生するわけではない。)

つまり、ミニブラックホールには本物のミニブラックホールと内部がインフレーションを起こしているミニブラックホールと2つのバージョンがあるということなのだが、2つのブラックホールはホーキング放射が異なっているらしく、区別することができるのだという。

そのほか、時間がなぜ発生するかということに関して、興味深い実験について教えてくれる。量子もつれエンタングルメント)状態の2つの粒子を一緒にしておくと、時間は止まっているが、2つの粒子を別々の宇宙にいるような条件にすると、両方で時間が動き出すという。すると、我々の時空間で時間があるのは、量子もつれ状態の粒子、あるいは宇宙が、インフレーションにより遠くに引き離された結果なのかもしれない。

最後に、生み出した宇宙に知的生命が発生した時には、倫理的な問題が発生するのではないかというもっともな疑問が議論されるが、まあ、この宇宙内で大量の動物や細菌を含む生物を日々殺しているのに、別の宇宙の知的生命だけを特別扱いするのはどうもなあ、という気がしました。

★★★☆☆

 


ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する

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