野生化するイノベーション 日本経済「失われた20年」を超える

清水洋 新潮社 2019/8/21
読書日 2019/10/11

イノベーションは飼いならすことができない、イノベーションを起こすときにも、起きたあとでも。

という内容を書いていて、たしかにそのとおりなのですが、きっと企業の開発の現場では誰もが身に沁みていることなのではないかと思います。そのせいか、書かれている内容を見ても、特に新規な感じはしませんでした。こういった開発の現場をまったく知らない人には有益なのではないかと思いますが。

でも、この本は各種の研究論文をもとに実証的に書かれていることから、意外な日本の事実について教えてくれるので、その点はとてもいいと思います。なので、わしが意外と思った事実の部分をメモとしてここに書いておこうと思います。

(1)日本では富の集中は起きていない
1980年代以降、アメリカでは金持ちがより金持ちになる富の集中が起きた。トップ0.1%の富が2%から8%まで上がった。ところが日本では2%のまま変わっていない。つまり富裕層がより富を手に入れているわけではない。しかしながら格差は広がっていて、それは低所得層の所得がさらに下がる形で広がっている。これは日本独特の格差拡大だという。

そうすると、富裕層の富も増えず、低所得者層の富は減ってるから、全体として日本は貧乏になったということですね。大金持ちになって話題を振りまく起業家が目立ってる気がしますが、そういった新興の富裕層を勘定に入れても、富裕層に富が集中しているわけではないというのは結構意外ですね。

(2)日本の流動性は低くない
日本は転職などの職の流動性が低いと言われてきました。ところが、世代間の移動率(つまり子供が親と違う職業を選ぶということ)で見ると、日本はアメリカよりも高く、日本はむしろ開かれた社会と言えるのだそうです。逆にアメリカは1990年代から移動率が低下し、階級が固定化されてしまって、低所得者層に生まれると、そこからの脱出が非常に難しいのに対して、日本では現状では開かれた社会のままだといいます。ただ、階級の固定化といった傾向が見え始めているので、要注意の状況なのだそうです。

まあ、この2つがわしにとって意外な事実で、この本の最後の方にちょろっと出てくるだけです。

★★★☆☆

 


野生化するイノベーション―日本経済「失われた20年」を超える―(新潮選書)

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