「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか

遠藤誉 PHP研究所 2018年12月22日
読書日:2019年5月23日

 遠藤誉の本は中国関連本の中でも独特な地位を築いていると思う。それは彼女が自分の頭の中で考えながら、試行錯誤で情報を集めているからだ。足でも稼ぐし、ネットなどの公開情報の収集にしても、そこまで入り込んで調べるかというレベルまで確認する。中国語ができるからではありますが、なにより子供時代、中国で強烈な体験をしていますから、中国の実情を探求する根性が他の人と違います(^_^;)。

 習近平の野望である「製造業2025」であるが、遠藤誉は中国はこの野望を達成するだろうと確信しています。それで、非常な危機感を持っていて、それを日本人に伝えようとしています。

 その中でも、遠藤誉が繰り返し述べているのが、半導体と宇宙です。宇宙の方は中国が世界の先端を走っているというのは、間違いない事実であるけれど、半導体の方はどうでしょう。

 ファーウェイの半導体設計子会社ハイシリコンが世界のトップ級の実力を持っているのは認めるけれど、でも、中国が世界から孤立してやっていける行けるとはとても思えません。半導体産業は、ものすごく幅広い裾野を持っているので、その全部を自前で揃えるのは不可能でしょう。

 2019年5月24日の報道になりますが、ハイシリコンの設計している通信用キーデバイスであるキリンが、実はアームのCPUを使っていることがわかりました。そしてアームはファーウェイとの取引を中止するというので、ファーウェイ不利との見立ての記事が多く見られます。

 これは単にスマホだけではなく、おそらく5Gの基地局関連のチップにもアームが入っているでしょうから、ファーウェイの5G関連は今後どうなるのか分からなくなってきたと思います。なぜ基地局にアームを使っていると予測できるかというと、5Gの基地局スマホ用と回路を共通化することで、コストを削減しようとしているからです。5Gは基地局を4Gよりもはるかに多く作らないといけませんが、基地局の値段が大幅に下がるので、じつは4Gよりも全体のコストが下がるんじゃないかと言われているんですね。

 しかし、単純にアームだけの問題ではありません。ハイシリコンはICの設計に世界標準の設計CADを使っているに違いなく、そのCADは例外なくアメリカ製でしょうから、最新のCADを使えなくなると、はたして今後も設計ができるのかどうか疑問です。自前でCAD作りができますかね。不可能とは言いませんが、それを半導体製造会社につなげ、普及させるのはかなり大変です。(マスコミは今後CAD会社がどうするのか、確認すべきと思います。)

 でもまあ、CADはいままで買った分が使えるでしょうし、最悪、違法コピーでなんとかなるかなんとかなるかもしれません。でもチップの製造はどうでしょうか。

 現在の最先端である7nmプロセスはTSMCサムスンしか供給できません。インテルも最近諦めたというくらいの技術なので、中国が追いつくのは相当無理があります。TSMCはファーウェイへの供給を止めないと言っていますが、ファーウェイが製造を中国の外部に頼っていることに違いはありません。中国は自前で最先端チップを製造できるでしょうか。

 遠藤誉は半導体装置も中国は猛追しているということを書いていますが、ここで出てくるのはエッチング装置に関してだけで、半導体プロセスはあまりに幅広いために、一部の装置を自前でできたからといって、全部自前で揃えるのは無理なんじゃないですかね。

 たとえば回路をシリコン基板に転写する露光装置は、最先端を供給できるのは、ほぼ1社に限られているので、それを自力で開発できるかどうか。露光技術には、単に露光装置だけでなく、現像装置、レジストなどの化学製品などの総合力が必要です。これらを中国が自力で揃えられるかどうか。

 ほかにも高誘電体膜とか最先端の専用の化学薬品を揃えられるのか。そして、それらの代替品は、すべて米国の膨大な特許に抵触せずに作らなくてはいけないのです。

 宇宙は確かに、中国が勝てる要素はあると思いますが、半導体に関しては、今後そうとう長い年月が必要でしょう。

 でもまあ、わしが言ってるのは、直近の米中貿易戦争の行方という面で話しているだけで、長い目で見たら中国が半導体で単独でトップに立てる可能性は皆無ではありません。しかも、中国人には10年単位の長い目で見るという、実によい習慣があります。宇宙でトップに立っているように、最後に勝つのは中国かもしれません。

 宇宙の量子暗号通信の話ですが、システムがわしにはよく理解できないところがありました。本当に宇宙空間と地上で光子のやり取りができるのかしら。しかもたぶん単一光子のやり取りができないといけないと思うですけど、光ファイバを使っても難しいのに大気を通してやり取りできるのかしら。実際には、なんらかの「なんちゃって量子暗号通信」になってるんじゃないかという気がする。

 まあ、システムはあとで確認するとして、そもそも量子暗号通信って本当にそんなに重要なのかしらね(^_^;)。

 5月に入って米中の貿易摩擦は加熱して、中国も激しく反応していますが、直近は中国に勝ち目はないでしょう。問題はそのあと中国はどうするかということですね。遠藤誉にはまだまだ頑張ってもらわないといけませんね。

 まあ、技術以前に、ドルで盛んに外債を発行している時点で、中国に勝ち目はないと断言できるんですけどね。

★★★★☆

 


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