落合 陽一 幻冬舎 2018年1月31日
読書日:2019年5月13日
気鋭の若手研究者の落合陽一が幻冬舎の箕輪厚介と組んで作った日本再興戦略。箕輪厚介なので、いつもどおり話を聞いてまとめただけだろうから深いところを期待してはいけないのかもしれないが、最初はいいが最後の方はかなり雑な作りになっているような気がした。
落合さんの日本という国と日本人に対する直感は鋭いものがあって、人口減少はチャンスだとか、士農工商の世界はインドのカースト制度と相性がいいとか、これからは士農工商のうち農の時代で、つまり専門バカではなく何でもできて臨機応変に対応できる方がいいとか、自由貿易よりも保護貿易だとか、移民に否定的なところとか、男女平等はあり得ないとか、近代的なヨーロッパの思考を超越しろとか、民主主義をアップデートしろとか、なかなかよろしいのである。
落合さんはテクノロジーに絶大な信頼を置いていて、テクノロジーの発展がすべてを解決する、みたいなところがある。わしも、付加価値とは究極的にはテクノロジーのことだと思っているので、この考え方には賛成である。
こういう基本的なものの見方にはなかなかいいところがあるが、それを実行していく具体的な方法というところがかなり弱い。まあ、そこは戦略ではなく戦術論になるから、本書の担当外になるのかもしれない。
たとえば、会社でくすぶっているおじさんをどうするかというと、ベンチャー企業に派遣すればいいという。こういうおじさんがいなくてベンチャー企業は困っているのだそうだ。なので、あちこちに派遣すれば、本人も頼りにされて生き生きと輝くという。一案ではあるかもしれないが、なんとなく、喫茶店でだべって考えたような解決策である。実際、そうなのかもしれないが。
なので、結局、自分がいま一生懸命にやっているプロジェクトみたいなことをやれということのようである。いま、落合さんは、大学をいったん辞め、自分で研究所を作って、それを大学の組織にしているんだそうだ。研究費はすべて自分で集めて、100ぐらいのプロジェクトを並行的に進めていているのだそうだ。こうやって何100人のミニ落合を作って日本を変えようというのである。人間への投資がもっとも利益率が高いと信じていて、それを実践しているのである。
この本は出版から1年以上経つのにまだ売れているようだ。大変な人気である。なかなかいいことが書いてあるし、さくっと読んで未来をインスパイアされるには、ちょうどいい本なのかもしれない。
★★★☆☆