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民主主義の死に方:二極化する政治が招く独裁への道

ティーブン・レビツキー, ダニエル・ジブラット 新潮社 2018年9月27日
読書日:2019年5月8日

この本が書かれて、日本語訳もされたのは、間違いなくトランプ政権の誕生の衝撃のせいだろう。丸々1章をトランプ政権に割いている。著者らは独裁かどうかの4つの基準を示しているが、トランプはすべてに当てはまるという。

しかも著者らによれば、トランプは結果にすぎず、その芽は90年代の共和党の元下院議長ニュート・ギングリッチまで遡るという。民主党と妥協を一切せず、戦争と称して手段を選ばず徹底的に戦う姿勢がそれだという。民主主義は一度に崩れるのではなく、少しずつ侵食されていくのだ。

この本を読めば、民主主義はとてもか弱く、簡単に独裁に陥ることが分かる。少し考えてみれば、世の中に成熟した民主主義国家は、驚くほど少ないのだ。イギリス、フランス、オランダ、ベルギーなど、たぶん10カ国程度だろう。

ヨーロッパの中にも、とくにEUに加盟しているような国でも、独裁的な国家が存在していることを知って、とても驚いた。わしはハンガリーというのは東ヨーロッパの中でも文化の発達した成熟した国のようなイメージを持っていたが、ヴィクトル・オルバンという男が独裁政治を行っているのだ。彼はEUのユンケル委員長をバカにするような行動をとって、EU議会の会派から資格停止処分を受けている。ユンケルに「もうがまんできん、うんざりだ」と言わせた男なのだ。なにか独裁国家は国家として破綻しているような印象があるが(ベネズエラとか)、ハンガリーはヨーロッパの中でもGDP成長率が高いのだ。

こうなってくると、自分の国のことが心配になってくる。日本は独裁的な国だろうか。野党から見ると安倍政権は間違いなく独裁的だというだろう。確かに長期政権なのだから、独裁的に見えるかもしれないが、わしにはそれほど独裁的とは思えない。どちらかというと、野党の方が、独裁的に見える。相手を犯罪者と決めつけたり、まったく妥協の余地のない闘いかたをしたりと、独裁的な気質を持っているように見えるのだ。

では日本の周りはどうだろうか。中国、北朝鮮とまぎれもない独裁国家が存在する。曲がりなりにも民主主義国家と言えるのは韓国ぐらいだろう。

ところが、ハンガリーの話を読んでいて、おもわず韓国を思い出してしまうのだ。両国は、よく似ている。つまり、現大統領ムン・ジェインは、司法に自分のいうことを聞く人間を次々送り政権に取り込む、マスコミを脅していうことを聞かせる、ライバルを犯罪者扱いにしてつぎつぎと投獄する、周辺の国に「もううんざりだ」と言わせる、などを行っている。経済成長率が2%台と比較的高いこともそっくりだ(国民の暮らしは悪くなっているようだが、とりあえず国としては成長している)。たぶん、本書の4つの独裁の基準はすべて当てはまるだろう。

妥協を許さずに、同じ国民同士で徹底的に戦う気質から見て、韓国に本書に述べる民主主義を根付かせるのは難しいだろうなあ、と思う。民主主義には相手を尊重する態度が求められるからだ。付き合いは最小限にして、あまり関わり合いになりたくない国です。

(なお、本書では、韓国を独裁国家でではなく、民主主義国家と扱っています。この本がか書かれた頃は、ムン・ジェインはまだ目立ってなかったからでしょうなあ)。

★★★★★

 


民主主義の死に方―二極化する政治が招く独裁への道―

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