人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか

慶應義塾大学出版会 2017年4月14日
読書日:2018年02月25日

企業は過去最高の業績をあげ、失業率は3%を下回り、人手不足は深刻という話は聞くのに、一向に賃金は上がらない。国はいら立ちを隠さず、企業にベースアップ3%以上を要求する異常事態。この状況は経済学で説明が付くのか、それとも説明のつかない前代未聞の状況なのか。そこで様々な研究者が様々な仮説を実証的に検討したのが本書。たとえば、非正規が増えたことが原因との指摘は多いが、本当は何が起きているのか実証的に検討している。

どの仮説を読んでももっともな気がする。しかし、わしが気にしていることについてほとんど検討している研究者がいないことについて、わしは危機感を覚えた。

わしが気にしているのは、日本の中にそもそも高給を稼げる職業が消えてしまったことに対する危機感だ。つまり、全ての職業が、国際的に見てコモディティ化した仕事しか残っていないのはないか、ということだ。

具体的に言えば、エンジニアや研究職の給料である。いま世界的なレベルでは、エンジニアの初任給(もう一度いうけど、大学を出たばかりの初任給ですよ)は10万ドルを超えている。熟練のエンジニアになると、20万ドル~30万ドルぐらいになる。これはシリコンバレーの話ではなく、中国でもそうなのだ。つまり、世界中でエンジニアは取り合いの様相を呈していて、世界共通の賃金体系になっているのだ。ところが、日本だけはそういった世界的な流れから取り残されている。

日本のエンジニアは国内で何をやっているかというと。海外で開発された最新の技術を日本仕様にコーデックしなおしているだけなので、ちっとも付加価値の高い仕事をしていないのだ。

日本のやっている仕事内容を国際比較すると、つまり日本人と同じような仕事をしている人たちとだけ比べると、(つまり革新的な開発をしているエンジニア、研究者、そして会社経営者を除くと)、案外おんなじくらいの給料なのではないでしょうか。

つまり日本人のいまやっている仕事は海外の人たちにとっても安い仕事なので、国際比較上、給料は上がりようがないという議論ですが、このように国際的な視点からの議論がまったくこの本にはなく、私は激しくがっかりしました。

(「IoT,AI等の...オープンイノベーション化が主流になると...一企業のフルセット化は不利になりつつある(P198)」との文言はありましたけど)

ちなみに、P112にルイスの転換点の記載がありますが、つまり女性、高齢者からの安い労働力の供給がこれ以上不可能になると、本当の人手不足になり給料が上がり始める可能性が指摘されていますが、わしもまだこの可能性はあり得ると思っていますので、もう少し注意深く様子を見守ってみたいと思います。

★★★☆☆

 


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