FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実

ボブ・ウッドワード 日本経済新聞出版社 2018年12月15日
読書日:2019年2月12日

これまでの著作を通じて、ボブ・ウッドワードの最大の関心は、政府の政策がどのように意思決定がなされるのかを読者に伝えることにあると思う。

本書の出だしもなるべく従来の方式を踏襲しているように見える。ホワイトハウスの閣僚、スタッフに十分インタビューを行い、インタビューに答えている側も、従来の意思決定の一連の流れを作ろうとしているのがわかる。

こうした書き方により、皆が何とか政権を形作ろうとしていることが分かり、しかもトランプ本人やスティーブ・バノンがほとんど出てこないので、なにか最初はトランプ政権がうまく動いていたような印象すら受ける。(おそらく最初は皆何とかやっていけると、楽観的だったのだろう。)

これはスティーブ・バノンに話を聞いてまとめた「炎と怒り」とは全く異なる印象を与えるもので、取材先が異なると、こうも印象が変わるのかと驚く。

だが、そのなんとか流れを作ろうという努力も、後半に行くにしたがって、まとまりを欠いていく。政権内部では、全ての意思決定に関与するか、少なくとも全てを観察していた人間がいるものだ。ところが、通常と異なり、政権の中心人物でも、全ての動きを捉えることができていない。何しろ正規のルートを無視して、話が進んでいくのだ。だから「聞いていない」という話が次々に出てくる。

さらに、人がどんどん辞めていくものだから、話の中心になってくれる人がどこにもいなくなってしまい、完全にまとまりを欠いてしまう。

これは、政権にいるエリート集団内に取材源を持ち、細かく話を聞いてまとめる、ボブ・ウッドワードの方法論が破たんしてしまっていることを示している。

トランプ政権がボブ・ウッドワードにもとらえることができない、異端の政権なのだ。

しかもエリートに取材源を依存しているボブ・ウッドワードは、バノンに取材した「炎と怒り」よりも生き生きとした描写に失敗している。

最後の方は、ロシア疑惑に関連する話が中心になる。まさしくボブ・ウッドワードが得意とする分野になるが、なんともぼんやりした印象しか得られない。そして最後は、ロシア疑惑に関するトランプの弁護士が辞任するところで終わる。

もうすぐ、モラー特別検察官の報告書が提出されるらしいけど、この本を読む限り、トランプ起訴の可能性は相当低い印象を受ける。モラーがクシュナーやイバンカといったトランプの身内に切り込まない限り、難しいのではないか。なにしろ側近と言えるものが一人もおらず、誰もが周辺人物にしかならず、誰一人として決定権を持っているように見えないのだから。

残念ながら、本は2018年3月で終わるので、6月に開かれた北朝鮮との会談の経緯については全く述べられていない。次の著作では、その点について述べられるのでしょうか。

 


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