櫻井 よしこ, 洪 ヒョン PHP研究所 2018年12月14日
読書日:2019年1月11日
いま韓国が米韓同盟を解消し、北朝鮮との統合を進めようとしているが、では、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権がどのような政権なのか。韓国はいまどういう状況なのか。
この本を読む限りにおいては、ムン・ジェイン政権が統合を加速することはあっても、後戻りはあり得ないことが分かる。
ムン・ジェイン政権のメンバーは、北朝鮮の主体(チュチェ)思想を信じるチュサパと呼ばれる人々である。つまりムン・ジェイン政権は北朝鮮が数十年にわたって韓国に介入してきた成果なのである。
チュサパの人々は民主主義、資本主義、法治国家という考え方を認めない。また、金大中、盧泰愚以外の成果を認めない。したがって、現在の韓国をすべて破壊しようとしている。
さらには、どうも、知識や教養ということも信じていないようなのだ。
この本の中で何度も唱えられているように、まるでカンボジアのポルポト政権のように、知識社会の全てを破壊し、原始に帰ることを目指しているかのようである。
ムン・ジェイン政権は、政府機関、司法機関、軍の要職に左派のメンバーを配置しており、またメディアへの弾圧を行い、事実上の大本営発表しか認めない状況を作っている。もはやメディアは何の力も持っていないようだ。
事実上のクーデターが成功したということである。
そもそも朴槿恵の弾劾の手続きが憲法違反になっており、法治国家とは言えない状況と著者は主張している。法治国家ではないとの印象は、日本に対する対応でも歴然である。
韓国は日本以上にネットが普及し、自分の考えを自由に述べたり、外国の考えを入手するのも可能である。ましてや韓国人は日本人よりもはるかに英語に堪能なのだから、より容易なはずである。そして、なにより資本主義を基礎として、外国との貿易で国家が成り立っている。
なのに、自殺行為としか思えない行動を取っている。
ムン・ジェインが大統領にならなくても、韓国は米韓同盟を消滅させたかもしれないが、この政権ならさらに加速させることは間違いないだろう。
中国も同じだが、経済が発達すれば民主主義が発展するとか、国民が自由になるとか、そういうことは起こらないことがはっきりした。リベラルはいま世界中から退潮しているが、その最も重要な例が東アジアで起きているということになりそうである。
★★★★☆