漱石の家計簿 お金で読み解く生活と作品

山本芳明 教育評論社 2018年4月20日
読書日:2018年08月21日

日本人のお金に対する典型的な態度というものがあって、
(1)自分はお金に興味がない、あるいはお金は汚いという。
(2)お金持ちは何か悪いことをしている、または何か悪いことをしないとお金持ちになれないという。
(3)でも、お金は大好きで蓄財に励むが、その結果お金持ちになっても、上記の理由から、うちにはほとんどお金がなく、生活はぎりぎりだと言い張る。
というもの。

漱石のお金に対する態度は、この典型的な日本人そのもので、なんとも読んでいてがっかりする。
(平均的な日本人そのものだったから、大衆の心を掴んだとも言える)

漱石は3つの大学を掛け持ちしていたうえに、小説の原稿料や印税を得ていた。その収入は他の作家からはうらやむべきものだった。さらに朝日新聞に入社し、収入を大幅アップすることに成功する。しかも仕事については、好きな時に小説を書き、催促はなし、将来人気がなくなってもとやかく言われないという好条件を獲得している。

こうして得た資金を、さらに株に投資し、数倍に膨らませて当時の数万円の資産形成に成功する。

いっぽう暮らし向きについて聞かれると、自分の暮らしはぎりぎりであると主張する。その根拠として、いまだに借家暮らしであるというところを強調する。朝日新聞からの給料については、口を濁し明言しない。

漱石の死後、出版業界が大きく発展、生前に比べて小説がバカ売れする。夏目家は現在の価値で5~10億円程度の印税を得るが、鏡子夫人はそれを全部使い果たすのである。特に、特定の企業に出資し、それが失敗したことが大きい。このような経緯は新聞の格好の材料にされ、面白おかしく書きたてられた。

それにしても、夏目漱石のお金に対する態度はがっかりで、同じ大学教授の本多静六の態度を見習ってほしいものである。(給料を元手に資産形成を積極的に行い、その手法を世間に公表した)。が、まあ、そうなったら漱石文学は残らなかったでしょうから、これで良かったのかな?

★★★★☆


漱石の家計簿 お金で読み解く生活と作品

 

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