ピーター ナヴァロ 文藝春秋 2016年11月29日
読書日:2018年10月20日
お互いに関税をかけあい、激しさを増す米中の貿易戦争。それが単なる貿易戦争ではなく、覇権を争うものであることが明らかになるにつれて、読み直されているのが本書。もし戦争になったときにどのような手が打てるのか、アメリカの立場から説明している。わしも、慌てて手に取ることにした次第。
では、いったいどのようなことができるのだろうか。
アメリカ軍は、韓国、日本列島、沖縄、フィリピンに基地を持っており、これに台湾を含めると、中国を海から取り囲んでいる。しかし、これらの基地から中国全土を攻撃できるような戦力は今は持っていない。また、そのような対応を取ると、状況がエスカレーションして、核戦争という最悪の結果を招く可能性がある。
そこで、次の戦略として、中国を海上封鎖し経済的な打撃を与えて、停戦に持ち込むということが考えられる。中国は製品の輸出だけでなく、石油などを輸入に頼っており、海上封鎖は効果があると思われる。
ところが、中国は大量のミサイルを持っており、アメリカ軍の基地に攻撃が可能である。ひとつの基地に1000発のミサイルが投入されれば、ほぼ迎撃は不可能である。また、ステルス戦闘機も大量に保有しており、アメリカ軍が制空権を確保できるかどうかも、微妙な状況である。
このような状況では、空母を中心とする機動部隊は、格好の標的になる可能性があり、最前線に出せるかどうか分からない。
そこでアメリカ軍が唯一優勢なのが、潜水艦の戦力ということになり、海上封鎖は潜水艦を使って行われることになりそうだ。
海上封鎖が効果を上げるには時間がかかり、その間、日本、台湾、フィリピンの各国が中国の猛攻撃を受けることになるので、アメリカの同盟国がその間耐えられるかという問題が生じる。
どうやら、アメリカがどのような戦略を取るにしても、日本が悲惨な目にあうことだけは避けらないようである。
日米同盟が結ばれた当時、日本が攻撃されることを想定していなかった、という言葉が重い。想定が変わった以上、アメリカは躊躇なく同盟をやめるかもしれない。そうなるとアメリカは大丈夫かもしれないが、日本はずっと厳しい状況に置かれることになる。
非常に厳しい、タフな時代が日本に訪れるかもしれない。
ところで、この本では韓国のことがほとんど出てこないのだが、いざ戦争が起きると、同盟国のなかで唯一中国と地続きの韓国はどうなるんだろうか。これまでの韓国の動きをみると、真っ先に同盟から外れて、中国の方に走っていきそう。そうなると、韓国は北朝鮮に飲み込まれるのかもしれない。
★★★★★