加藤文元 講談社 2025.10.20
読書日:2026.4.23
ZEN大学教授のブンゲン先生が「圏論」について、「米田の補題」までを理解できることを目標にした本。
なんか評判らしいので手に取ったわけです。ブンゲン先生については以前、次の本でお世話になったことがあります。いつの間にかドワンゴが作ったZEN大学の教授になられていたんですね。
IUT理論(宇宙際タイヒミュラー理論 )もなんか圏論と関係ありそうだし、20世紀の新しい数学というものに触れてみることにしました。
圏論というのは一言でいうと、モノとモノを矢印でつないでその関係の形だけを議論する、というものです。モノ自体が何か、ということは議論しないんですね。だから同じ関係を作れるのなら、それが整数のような数だろうが集合だろうが同じように議論できてしまうんです。
その意味は、文学的に言うなら、あなた自身がどんな人かは直接分からなくても、あなたと関係する人や物事との関係が全部分かれば、あなたがどんな人か分かる、と主張しているような数学です。
そして「米田の補題」というのは、ざっくり「関係性が全く同じ形をしているのならそれは同じモノだといってもいい」ということを証明するものです。これが何を意味するかというと、例えば数論と幾何学を見比べて同じ関係性を持っていたら、数論で考えて分からなかったら幾何学で考えて問題を解いて、それをまた数論に戻してもいい、ということです。
これは人間でいうとアナロジーが効くということなんですね。人間があることを理解するのに、全く関係ない違う分野から、「これは〇〇に例えるなら、こういうことと同じなんだな」というふうに理解するようなものです。だから普段から人がやっているようなことを数学でもできることを証明しようというのですが、そんなことが果たしてできるのでしょうか。
読んでいくと、「直積」という概念の矢印の関係図が出てくるんですね。直積を使うとある整数と別の整数の最大公約数が表現できてしまうんです。本当に矢印だけで最大公約数が表現できるということに、ちょっと感動しました(笑)。直積は集合でいうと、交わっている(A∩B、AND)の最大値を表しているともいえるし、いろいろなところで使える概念です。(ちなみに「直和」という足し合わせる概念もあります)。つまり、これは関係性を示すことで、その中身も議論できるということを示す例ですね。
こういう矢印で作られたある関係のかたまりを「圏」と呼ぶんですね。そうすると、圏と圏の関係も矢印で結べてしまうんです。この圏と圏を結ぶ矢印のことを「関手」と呼びます。それだけではなくて、圏と圏を結ぶ矢印が2つあったら、つまり関手が2つあったら、その関手どうしの関係もさらに矢印で結べるんです。これを「自然変換」といいます。
自然変換ってへんな名前だけど、どうももともと数学の世界で、座標系をどんなふうにとっても同じ結果になる、というようなことを意味しているらしいです。たとえば直交座標で測定しても、極座標で測定しても、最終的にはおんなじみたいな。だから、圏論の自然変換も、図形でいえば座標変換をしているくらいのイメージでオーケーです(たぶん(笑))。
ここで、ある圏のなかのひとつの要素aと、要素aと矢印でつながっているすべての要素xを取り出すという特殊な関手、haを考えます。関手haで取り出された圏は、aに関係するすべてのものを取り出しているので、a自身を表現している圏と言えます。
この関手haを自然変換したFという関手を考えます。Fはなんでもいいです。
ここで、a→a、つまり自分自身に戻ってくる矢印(同型射(どうけいしゃ)という)は、Fで自然変換するとF(a)になります。すると、y:自然変換(ha、F)→F(a) というような写像yを考えることができます。これを米田写像といって、この米田写像が全単射、つまりhaで取り出したすべての要素が、関係性を含めて、1対1でFの写像先にもあるという証明ができるんですね。これが米田の補題です。つまりイメージ的には、aに関する関係を、別のFの圏にそっくり写したということが言えます。
逆にいうと、ある圏と別の圏があって、それが米田写像だと証明できれば、そこのある要素と要素同士の関係は全く同じだ、ということになるはずです。だから別の圏に移って、そこで成り立つことはもう一方の圏でも成り立つということが証明できるというわけです。たぶんそういう意味のはずです(笑)。
たぶんというのは、この本では米田の補題がどんなふうに役に立つのかの実例とかはまったく書かれていないから。なので、米田の補題が重要だといってるんだけど、どんな感じに重要なのかよくわからなったです。その辺がとっても不満なんだけど、まあ、いちおう基本は理解できたかな。
じつはこの本を読むときに、分からないところをいろいろAIに訊きながら読み進めていきました。なので、かなりの速度で読み進めることができました。わしは数学なんかはいちど引っかかるとなかなか先に進めないたちなので、もしもAIがなかったら図書館の貸出期限内に読み切れなかったかもしれません。疑問がその場で解決できるAIは本当に便利です。(なお、今回はグーグルのGeminiに訊きました)。
そのGeminiのいうには、米田の補題を応用した例について読みたいのなら、グロタンディークという人の「孤独な数学者の冒険」という本を読めばいいと勧められました。グロタンディークはなんかすごい人らしい。AIは本当に役に立つなあ。
★★★★☆

